伊豆 松崎のなまこ壁の家。 1992年2月、静岡県松崎町。
松崎には高校生のときにつげ義春の漫画「長八の宿」を読んで以来ずっと行きたいと思っていた。モデルになった旅館山光荘に予約をとって泊った。旅館はつげの漫画の舞台になったことを売りにしていて人気があった。
長八というのは江戸時代の鏝絵の名手伊豆の長八(入江長八)のことで、この旅館には彼の作品がいっぱい残っていた。鏝絵の存在はこの漫画で初めて知った。知ることによって自分の周りにも鏝絵はたくさんあることに気づくようになった。
思えば、私の古い町並み歩きの原点はつげ義春かもしれない。もともと奈良の古い町並みを歩くのが好きで、今井町などは高校生の時に何度も訪れていた。しかし、意識して街道の宿場町を歩き始めたのは高野慎三さんの「宿場行」「旧街道」という2冊の本を読んだからだ。
高野慎三さんというのはご存知のようにつげさんと歩みを共にした漫画編集者だ。そのかたわら上記のような紀行書も著しておられた。氏の著書に触発されて宿場歩きを始めたこともあり、何度かファンレターのようなものを出して、ご返事もいただいた。その中で、「つげさんにあなたの写真を見せたら、これこれの写真をすごく気に入っていた」というようなことが書かれていたことがあり、すごく嬉しかったのを覚えている。
つげさんの旅ものの漫画と高野さんの著作が私の田舎町探訪のきっかけになったのは間違いない。
山光荘の長八の鏝絵。 1992年2月。
これらの写真も山光荘の内部の写真だと思うが、30年近く経った今では分からない。
近くの浄感寺とその内部。
浄感寺に残る長八の作品。
浄感寺の一対の飛天の像。
1990年の映画「つぐみ」も松崎で撮影された。そのことは松崎に行くまで知らなかった。
映画に使われた旅館「梶寅」。 1992年2月。
松崎で見かけた古めかし診療所の建物。おそらく一続きの建物だったのだろうと思う。
松崎にはなまこ壁の見事な建物がいくつも残っていた。
1992年2月。伊豆 松崎。
橋にもなまこ壁と鏝絵の装飾が施されていた。 1992年2月。
当時、かろうじて残っていた映画館、セントラル劇場。昔はどこの町にも映画館があった。
板壁の家や板壁の背の高い二階家。 1992年2月。
「つぐみ」にも出てくる海辺の景色。
一軒だけ残っていた藁葺きの家。
1992年2月。 静岡県松崎町。